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敬愛なるベートーヴェン
Copying Beethoven

2006年12月9日(土)、日比谷シャンテ シネ、新宿武蔵野館、
シアターN渋谷他、全国ロードショー

■story
1824年のウィーン、"第九"の初演4日前。ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンは、まだ合唱パートが完成してなかった。音楽出版社シュレンマーは、音楽学校にベートーヴェンのコピスト(写譜師:作曲家が書いた楽譜を清書する職業)として一番優秀な生徒を依頼していた。そこに現れたのは若き女性アンナ・ホルツだった。困惑するシュレンマーは、アンナを追い返そうとするが、ベートーヴェンを尊敬していたアンナは、シュレンマーに代わって写譜を始め、出来上がった原稿を持ってベートーヴェンのアトリエを訪ねて行く。

 ベートーヴェンは、彼女の写譜した原稿を見るなり、音符の写し間違いを指摘する。そんなベートーヴェンに対し、「あなたなら、ここは長調にしません。だから短調に修正したんです」と、きっぱり言い切る。その一言で、ベートーヴェンには、アンナがただならぬ才能の持ち主であり、同時に自分の音楽を深く理解していることがわかり、写譜の仕事をまかせることにした。


 


■キャスト
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン/エド・ハリス
アンナ・ホルツ/ダイアン・クルーガー
マルティン・バウアー/マシュー・グッド
ウェンツェル・シュレンマー/ラルフ・ライアック
カール・ヴァン・ベートーヴェン/ジョー・アンダーソン
ルディー/ビル・スチュワート
 





       

 ついに迎えた"第九"初演の日。ドレスを身にまとい劇場へやって来たアンナは、婚約者のマルティンが用意した席に座ろうとした時、シュレンマーが現れる。アンナを舞台裏へと連れていった彼は、指揮棒を振るベートーヴェンにテンポの合図を送る役目を、代わりにアンナに頼みたいと懇願する。そのアンナが舞台裏で見たのは、耳の不自由さで満足に指揮棒を振れない不安と恐怖に駆られた、ベートーヴェンの姿だった・・・。
     
     

■プロダクション・ノート
『アポロ13』、『トゥルーマン・ショー』、『ポロック 2人だけのアトリエ』、『めぐりあう時間たち』で4度アカデミー賞にノミネートされているエド・ハリス。撮影初日、現場を訪れた製作兼脚本家のクリストファー・ウィルキンソンは、「ベートーヴェンがそこに立っている」と感じ、「エド・ハリスに何をしたんだ?」という疑問と感嘆の声を、思わずあげてしまったという。実際、ハリスは、役作りの為、何カ月もかけピアノやバイオリンを、指揮を勉強し、指揮の撮影シーンでは、譜面を見なくとも指揮できるほどだったと関係者を驚かせてしまうほど、ベートーヴェンの伝記や関連の書籍を読みあさった。「すべてはベートーヴェンの音楽の才能がどこから生まれるのかを、精神性と知性から解き明かすためだ」と、ハリスは語る。
  ダイアン・クルーガーも、ハリスと同じく音楽や指揮を勉強した。「エドとアニエシカには、撮影開始の1年前にロサンゼルスで会ったの。それから1カ月かけて本読みやリハーサルや細かい調整をしたわ。おかげで、ロケ地のブダペストに着くまでに、何がしたいのか、いい考えが浮かんだわ」と、クルーガーは言う。そんな彼女の演技に、製作兼脚本家のウィルキンソンは言う。「ダイアンの演技を見て、スティーヴンと私の書いた脚本が初めて完全に理解できたんだ」
       



ハンガリーに19世紀のウィーンを再現

撮影は、2005年4月、ハンガリーのブダペストでスタートした。劇中の主な舞台ウィーンとなるベートーヴェンのアパートセットは、マル・フィルム・スタジオ内の防音スタジオに建てられた。リサーチのためにウィーンを訪れ、ベートーヴェンが住んだ2軒の家を見学したプロダクション・デザイナーのキャロライン・エイミーズは語る。
「ビニールやプラスチックを使わず、19世紀に存在した素材だけを利用して、今回のセットを作り上げた。そのために、素材の扱い方を知っている熟練した職人を呼び寄せたの」そして「ベートーヴェンの関心はいつも音楽にあったので、掃除には向いていなかった。彼は、何人もの家政婦を雇っていたの。私は、彼がウィーンで生活した期間に、50軒以上の家に移り住んだと知って驚いたわ。彼はとても疑い深く、家政婦から逃げ出すように何度も引っ越したというわけ」
  《大フーガ》の演奏シーンが撮影されたのは、ブダペストの民族博物館。また、クレスンスキ・タヴァーン(ベートーヴェンが通った居酒屋)と、シュレンマーの印刷所および事務所のシーンは、ジッチ地区の古城にセットを組んで撮影された。さらに、ウィーンの町中の場面は、オーストリアの国境に近いショプロンで撮影された。ショプロンは、13世紀に建てられた教会やユダヤ教会、そこに続く石畳の道など、中世のたたずまいがそのまま残る美しい町として知られている。町の中心にある築300年の建物は、シュレンマーの事務所にいたる通路として使われている。

(プレス資料より)

 
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第九が初演されるまでの4日間にスポットをあて、写譜師の目線から描いたことが興味深かった。第九の演奏はとりわけ感動的で、本当にベートーヴェン本人がそこで指揮してるんじゃないかと感じるよう。第九がこんなにも素晴らしい作品と感じたのは初めて。『戦場のアリア』のダイアン・クルーガーも、作曲家を志す女性としての逞しさと繊細さを好演していたように思う。
当時、モーツァルトを代表する音楽家は、宮廷や貴族に仕えていたが、ベートーヴェンは唯一誰にも仕えず作曲活動を行っていたという。天才音楽家として知られているが、耳が聴こえなくなるなど、私生活は苦悩に満ちたものだったようだ。これまで描いていたベートーヴェンの曲と人のイメージが一変するような印象を受けた。(JS)










■監督:アニエスカ・ホランド
 1948年、ポーランドのワルシャワ生まれ。プラハのFAMUで映画と演出を学ぶ。『Aktorzy prowincjonalni』(79)を監督し、カンヌ映画祭の国際映画批評家連盟賞を受賞。『僕を愛したふたつの国/ヨーロッパ ヨーロッパ』(90)で米アカデミー賞の脚色賞にノミネート。『オリヴィエ オリヴィエ』(92)。『秘密の花園』(93)。詩人ランボーとヴェルレーヌの禁断の関係を描く問題作『太陽と月に背いて』(95)。『奇蹟の詩 サード・ミラクル』(99)など。

■スタッフ
監督:アニエスカ・ホランド
脚本・製作:クリストファー・ウィルキンソン
製作:シドニー・キンメル
製作:マイケル・テイラー
脚本・製作:スティーヴン・リヴェル
制作:ロナルド・ヴァスコンセス
撮影監督:アシュレイ・ロウ
美術:キャロライン・エイミーズ
衣装:ジャイニー・テマイム

 


           


■オフィシャルサイト
http://www.Daiku-movie.com


2006/イギリス、ハンガリー/カラー/英語/104分/SRD/シネマスコープ/原題Copying Beethoven/
字幕翻訳:古田由紀子/字幕監修:平野昭/字幕アドバイザー:佐渡裕
オリジナルサウンドトラック:ユニバーサル クラシックス&ジャズ

(c)2006 Film & Entertainment VIP Medienfonds 2 GmbH & Co. KG

配給:東北新社
宣伝:アステア+P2

     


■本編に登場するベートーヴェンの音楽
○劇中代表楽曲

「第九交響曲」
「エリーゼのために」
「弦楽四重奏曲《大フーガ》」
「弦楽四重奏曲第15番」
「弦楽四重奏曲第14番」
「交響曲第7番」
「ピアノ・ソナタ第32番」
「ヴァイオリン・ソナタ第7番」
「ピアノ協奏曲第4番」

○劇中楽曲】
弦楽四重奏のための《大フーガ》変ロ長調Op.133

(本編)
ピアノ協奏曲第4番 ト長調Op.58〜第2楽章
交響曲第9番ニ短調Op.125《合唱》〜第4楽章
交響曲第9番ニ短調Op.125《合唱》〜第4楽章(ベートヴェンのピアノ演奏と歌)
交響曲第9番ニ短調Op.125《合唱》〜第4楽章(アンナのピアノ演奏)
ピアノ協奏曲第4番 ト長調Op.58〜第2楽章
ピアノ、合唱、オーケストラのための《合唱幻想曲》Op.80
交響曲第9番ニ短調Op.125《合唱》〜第4楽章
バガデル イ短調WoO59《エリーゼのために》(シュレンマーのピアノ演奏)
ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調Op.111〜第2楽章(シュレンマーのピアノ演奏)
交響曲第9番ニ短調Op.125《合唱》〜第2楽章(オケのリハ場面)
ピアノ・ソナタ第5番ハ短調Op.10-1〜第3楽章
ヴァイオリン・ソナタ第7番 ハ短調Op.30-2〜第3楽章
交響曲第9番ニ短調Op.125《合唱》〜第3楽章
弦楽四重奏曲第14番 嬰ハ短調Op.131〜第7楽章
交響曲第7番 イ長調Op.92〜第2楽章
弦楽四重奏曲第9番 ハ長調Op.59-3《ラズモフスキー第3番》〜第2楽章
交響曲第9番ニ短調Op.125《合唱》〜第1楽章(初演の場面)
交響曲第9番ニ短調Op.125《合唱》〜第2楽章(初演の場面)
交響曲第9番ニ短調Op.125《合唱》〜第4楽章(初演の場面)
弦楽四重奏のための《大フーガ》変ロ長調Op.133(ベートーヴェンのピアノ演奏とヴァイオリン演奏)
弦楽四重奏のための《大フーガ》変ロ長調Op.133(ベートーヴェンのピアノ演奏)
弦楽四重奏曲第14番 嬰ハ短調Op.131〜第6楽章
弦楽四重奏曲第6番 変ロ長調Op.18-6〜第4楽章
弦楽四重奏のための《大フーガ》変ロ長調Op.133(初演の場面)
弦楽四重奏曲第15番 イ短調Op.132〜第3楽章
交響曲第9番ニ短調Op.125《合唱》〜第4楽章
交響曲第9番ニ短調Op.125《合唱》〜第4楽章

(エンドロール)
弦楽四重奏曲第9番 ハ長調Op.59-3《ラズモフスキー第3番》〜第2楽章
ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調Op.111〜第2楽章
交響曲第9番ニ短調Op.125《合唱》〜第4楽章