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潜水服は蝶の夢を見る
Le Scaphandre et le Papillon

2008年2月9日 シネマライズほか全国ロードショー


■ストーリー
 目の前に広がる暗闇・・・
視界が徐々に開けてくる。そこは病室らしい。意識を取り戻したジャンは状況を把握できない。
 やがて、自分が倒れ、昏睡から目が覚めたのだと理解する。
だが、自分の言葉が医者にも看護婦にも伝わらず、身体がまったく動かない。

 一方的に話しかけてくる主治医からジャンは恐ろしい事実を知る。「ロックト・インシンドローム(閉じ込め症候群)」
全身が麻痺して動かなくなっていた。自分は話せなくなっている。身体の中で唯一動くのは、左目だけ。 絶望に打ちひしがれるジャン。目覚める前の自分からは、かけ離れた姿。
「まるで何かの標本のようだ・・・」

 ジャンは「ELLE」誌の編集長であった。華やかなファッション撮影のためにスタジオから仕事に明け暮れる日々。女性関係も忙しく、子供も3人いる、幸せでエレガントな毎日だった。だが、今は潜水服に閉じ込められて動けなくなっているのも同然。ジャンの心は深く静かに沈んでいった。

 


■キャスト
マチュー・アマルリック
エマニュエル・セニエ
マリ=ジョゼ・クローズ
アンヌ・コンシニ
パトリック・シェネ
ニエル・アルストリュプ
オラツ・ロペス・ヘルメンディア
ジャン=ピエール・カッセル
マリナ・ハンズ
マックス・フォン・シドー
 






       

 

 しかし、彼には支えてくれる人々がいた。言語療法士のアンリエットは、彼の左目の瞬きが唯一の伝達手段であることを認識し、コミュニケーションの手段を発明する。
「はい」は、瞬き1回、「いいえ」は、瞬き2回。次の段階は彼女がアルファベットを読み上げる。

「E,S,R,I,N・・・」

文字を選ぶときには瞬きをし、単語が完了したら瞬き2回。そうして、彼は文章を作り、会話をしていく。ジャンは、アンリエットにあるメッセージを伝えてみる。
「死にたい」

 しかし、彼は絶望の淵で希望を見出す。「もう自分を憐れむのをやめた」身体は動かないが、自由になるものが3つある。まず左目のまばたき。そして、記憶と想像力。
「想像力と記憶で僕は“潜水服”から抜け出せる」
蝶が自由に舞うように、自分をどこにでも連れて行ける。彼は生きる気力を徐々に取り戻す・・・

 

※   ※   ※


       
 






       


■プロダクション・ノートより

Q:どういう経緯で監督を引き受けることになったのか? なぜ、ジャン=ドミニク・ボビーの物語だったのか?

・・・本作では観客は主人公の腹心の友となる。観客にはジャン=ドーの頭の中で何が起こっているのかがわかる。そしてぼくはジャン=ドーの想像の部分を自由に描くことができた。
時間やあらゆる制限を超えて何でもできるチャンスだった。だからこれは、映画製作者、そしてアーティストとして、映画作りに何でもやりたいことを投入できる素晴らしい機会だと思ったんだ。

私は映画を好きなように組み立て、好きなように言葉を操ることができた。また、私は映画をフランスの病院で、フランス語で撮らなければいけないと思った。なぜなら、ジャン=ドーがいた病院でなければ、彼の世界を正しく感じ取ることはできないだろうと思ったからだ。この物語がたとえどんなに普遍的だとしても、やはり、フランス人の男によって語られたものだ。私はその声を感じたかった。そうするべきだと思った。そこでベルクに行って病院を見た。
人々はとても親切だったし、私がそこで撮ることを望んだよ。ただ、誰もフランス語で撮れとは言わなかったけどね。ぜひフランス語でやれと言ったのはジョン・キリクだ。脚本のロナルド・ハーウッドは最初、英語で素晴らしい台本を書いてくれた。でも私はそれをシーンごとに俳優たちと一緒に書き直していったんだ。
聞き取り手だったクロード・マンディビル、ELLE誌のアンヌ・マリー、そしてジャン=ドーの友人から色々な事実を聞きだしながら。


Q:ジャン=ドーの物語はアーティストの人生と比較できますか?

うん、それははっきりしている。文章を書くことは彼を救った。彼の内なる人生は、彼が小説を書き始めたから生まれたんだ。それはアートを創るプロセスに似ている。
小説は彼に存在意義と人生を与え、彼の家族にも人生を与えた。小説のおかげで家族は彼が何らかの形でまだ生きていると感じた。それによって、病が引き起こした深い悲しみと付き合うことができたんだ。

Q:画家そして映画製作者、2つのアーティストとしての顔をお持ちですが、その中で「書く」ということはどういう位置づけですか?

映画製作者というのは、いつも何かの焼き直しなんだ。編集も焼き直しだね。わたしは絵を描いているときは、何も解釈してないし、何かを別の形に作り変えてるわけじゃない。書くことも同じだ。
小説を書くことは翻訳じゃない。何かを焼き直しているわけじゃないからね。だけど、脚本を書いて、それを映画にするというのは、既にある原作を別の形に翻訳するという作業だ。ただ一度その作業を済ませば、あとはもっと自由に絵を描くようにやればいい。



 
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「ELLE」の編集長であったジャン=ドミニク・ボビーの実話に基づく作品をジュリアン・シュナーベルが監督。ジャンは、43歳という若さで突然、脳溢血で倒れ、そのまま寝たきりの生活を余儀なくされた。唯一残された片目の動きで書いた自伝的小説が原作となっている。
「人生を見つめること。目覚める機会。これは死や病と対峙する我々すべての物語だ。注意深く見れば、そこに意味や美がある」と、シュナーベルは言う。ジュリアン・シュナーベルの視点が新鮮で美しい。 (JS)









■監督:ジュリアン・シュナーベル
Julian Schnabel
1951年ニューヨーク市、ブルックリン生まれ。1972年にニューヨークのメアリー・ブーン・ギャラリーで初個展を開催。ニューペインティングのキーパースンとなった。絵画や彫刻作品は、MOMAをはじめ、数多くの美術館とギャラリーに出品されている。
96年にジャン=ミシェル・バスキアを描いた『バスキア』で初脚本、初監督。2000年に『夜になる前に』を発表。



■スタッフ
監督:ジュリアン・シュナーベル
脚本:ロナルド・ハーウッド
原作:ジャン=ドミニク・ボビー「潜水服は蝶の夢を見る」(講談社刊)
製作:キャスリーン・ケネディ/ジョン・キリク
撮影:ヤヌス・カミンスキー
編集:ジュリエット・ウェルフラン
美術:ミシェル・エリック/ロランオット
タイトル&クレジットデザイン:ジュリアン・シュナーベル
衣装:オリヴィエ・ブリオ
音楽:ポール・カンテロン

     

 

   


■オフィシャルサイト
http://chou-no-yume.com/

(C) Pathe Renn Production-France 3

英題: LE SCAPHANDRE ET LE PAPILLON
2007年/フランス=アメリカ/
パテ提供/1時間52分/ヴィスタサイズ
日本語字幕:松浦美奈
配給:アスミック・エース