cinema

 

マイ・ブックショップ
The Bookshop

2019年3月9日、シネスイッチ銀座ほか公開

■ストーリー
 戦争で夫をなくした未亡人フローレンス・グリーンが夫との夢であった書店をこの町に開くことを決意する。長年、悲しみに沈んでいたフローレンスだったが、ようやく顔を上げた瞬間、何をすべきか悟ったのだ。
 町の銀行員キーブルから何度も融資を断られるも、毎晩本を読んでくれた夫の記憶を胸に、放置されたボロボロの建物、通称「オールドハウス」を買い取った。だが、町の人はこの期に及んで、建物の転売を進めたり、別の物件を紹介しようとしたり、腑に落ちない言動でフローレンスに接触する。
  ■キャスト
エミリー・モーティマー
ビル・ナイ
パトリシア・クラークソン
 
         
 

 

 ある日、町の有力者ガマート夫妻に招待され、屋敷へ行く。ガマート婦人は「町に本屋ができるといい、と町のみんなで祈っていた」と感じよく切り出すが、いきなり「オールドハウスを別の用途、町の芸術センターとして使いたい」と申し出る。
 町の人々の不振な申し出にようやく思い当たるも、夫人の申し出にひるむことなく、フローレンスは「書店を開く」とキッパリ返答する。
 オールドハウス書店は、何とかオープンを果たし、めずらしさもあって順調に営業していたが、ついにガマート婦人の攻撃が始まる・・・

           ■   ■   ■


 
         
 






 


イザベル・コイシェ監督による解説
(抜粋)

 ペネロピ・フィッツジェラルドのこの小説を読んだのは、10年ほど前、イギリス諸島が冷夏に見舞われていたときで、この本を読んだことは私にとって素晴らしい体験となりました。まるで自分が1959年にタイムスリップしたように感じ、ある意味、自分が純粋で優しく理想に満ち溢れるフローレンス・グリーンだと本気で信じてしまいました。
 実際、私は彼女なのです。フローレンスには、私がこれまで撮ってきた作品のどの主人公にも決して感じたことのなかったような深いつながりを感じています。

 人は日々思い切った賭けにでています。大きな賭け、小さな賭け、危険なもの、安全なもの。そしてそのほとんどが他人に知られることはありません。ですが、その賭けにまわりの人が気づいたとしたら何が起こるでしょう?それによって我々が暮らすこの世界にはどんな反響が巻き起こるでしょう?

 一見、素朴でありふれているフローレンス・グリーンという人物にはどこか英雄的な要素があります。彼女はやっかいなことだとわかった上で、ただ「やりたい」という思いだけで書店を開くのです。しかもまわりの人のことを気にすることもなく、誰かの協力を得ることもなく、ただ気を引き締めて実行に移す。その結果フローレンスは注目されることになります。

 とても興味深い点は、戦後のとてもひっそりとしたイングランドの静かな町で、このもの静かな女性が皆に成長するよう呼びかけ、そうしたほうが皆、よりよい人生を送れる、と自信をもって宣言するのです。
 この物語は、皆を応援し皆が自分自身を信じる勇気をくれる人がいた、という意味で弱者にとっての寓話と言えます。フローレンスは普段なら他人をリードするタイプの人間ではありません。そういう役目を担うタイプの人は他にいるのですが、彼らは強要されることを好みません。フローレンスの行動はまさに、彼女の町で社会的にリーダーシップを取るべき人々が何もせずにいたところに光を当てるのです。
 だからこそ彼らの反感を買うことになります。ですがフローレンスは勇気を見せて、数人から警告された後もがんばり続けるのです。

 
 
     

■監督:イザベル・コイシェ
 1960年スペイン・バルセロナ生まれ。バルセロナ大学で18世紀と19世紀の歴史を学んだ後、広告とコピーライターの仕事で生計を立てるようになった。
 『Demasiado Viejo Para Morir Joven』(89)、で脚本・監督デビュー、ゴヤ賞最優秀新人監督賞にノミネート。『あなたに言えなかったこと』(96)で、2度目のゴヤ賞(最優秀オリジナル脚本賞)にノミネート。
 『死ぬまでにしたい10のこと』(03)はベルリン国際映画祭で絶賛。『あなたになら言える秘密のこと』(05)は、最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀製作者賞、最優秀脚本賞の4つのゴヤ賞を獲得。2015年、フランス芸術文化勲章「シュヴァリエ」受賞。
 このほかに、バルカン戦争中のサラエボで撮影された『Viaje al coraz de tortura』(02)、『パリ・ジュテーム』(06)に参加。国境なき医師団を描いた『invisibles』(07)、『エレジー』(08)、『ナイト・トーキョー・デイ』(09)、『Listening to Juez Garzon』(11)、『しあわせへのまわり道』(14)、『Nobody wants the Night』(15)、などがある。

■スタッフ
監督・脚本:イザベル・コイシェ
原作:ペネロピ・フィッツジェラルド「The Bookshop」
製作:クリス・カーリング
撮影:ジャン=クロード・ラリュー
美術:リィオレンス・ミケル
編集:バルナト・アラゴン
音楽:アルフォンソ・デ・ビラリョンガ
衣装:メルセ・パロマ
キャスティング:ジェレミー・ジマーマン

 
       

■オフィシャルサイト
http://mybookshop.jp/

(C)2017 Green Films AIE, Diagonal Televisio SLU, A Contracorriente Films SL, Zephyr Films The Bookshop Ltd.

原題:The Bookshop
字幕翻訳:大城哲郎
製作年:2017年
製作国:イギリス、スペイン、ドイツ
上映時間:112分
配給:ココロヲ・動かす・映画社○